甘々とロマンス中毒

芸能人の『雪村あやみ』だった頃よりも近い存在のはずなのに、今ある『幼なじみの高校生と大学生』の関係の方が、あやちゃんを遠くに感じる。

うるうる視界が滲む。
眉根を寄せて寂しげに睫毛を伏せるあやちゃんを、上手く見れない。
涙を弾くように瞬きをした。
やっぱり私は子どもだって実感するの。

「(あやちゃんの夢を応援したいのに、どうして泣いちゃったんだろう)」

ふるふると頭を横に振った。

「(これじゃ、ダメだ…っ!)」

頬を滑っていく涙を必死に擦る。

もう、泣くのは終わり———

ふにゃり、口角を緩やかに持ち上げる。


「あやちゃんに追いつくようにいっぱい走るね」

「?」

「勉強もバイトも自分磨きも、これまで以上に励みます。背伸びしなくていいように、早く“大人”になりたいの。あやちゃん…実習、頑張ってください」

「ん…。ありがとう」


人差し指に涙の雫をのせた。
ぎゅうっと瞑った瞳を僅かに開いて。鼻をぐすりと啜って。「がんばります」と、自分に言い聞かせるように鼓舞する。

真っ直ぐ見つめた先で、朱色に灯した私の顔をあやちゃんが覗き込んだ。生温い夏風の匂いに、ローズマリーの香りが華やかに混ざる。


「焦らないで、一咲のペースで走ればいいよ。俺も、自分のペースで走って行くから」


ふわ…と、前髪を撫でられた。胸が甘い音を奏でる。「でも」と、ことさら柔らかな声色で言った。


「寄り道しないで、俺のとこにおいで」