甘々とロマンス中毒

唇に含んだ余裕たっぷりな微笑みと、黒曜の瞳に宿る悪戯な眼差しに、ぷしゅう〜〜…と、熱が押し寄せる。

とくとく。ことこと。
混ざり合う心音が身体中に鳴り響く。

あやちゃんの言動にキュンとする私がいる一方で、勝手にしゅんとしちゃう私もいる。
恋の駆け引きは解けない方程式だ。


「(かお、あつい…)」

真正面から見つめると、あやちゃんが静かに小首を傾げた。

「大人揶揄うの禁止な」

眉目秀麗な顔に涼しげな表情がのる。
それは私の心を簡単に攫っていく———…

「…………っ」

あやちゃんも私と同じ気持ちだったらいいなって。
あやちゃんの気持ちを確かめたいって。

今朝の淡い決意はどこへいったんだろう。
すっかり臆病になってしまった。

「そう言うのじゃないの」


恥ずかし紛れにそっぽを向いたとき、隣に腰掛けてきた女性と肩が軽くぶつかる。


「うっ…わ。すみません」
「ひゃ。ご、ごめんなさい」


どちらともなく謝る。女性は「いえ、こちらこそ…」と、立ち上がり去って行き、私は頭を下げた。ペットボトルのキャップをしていたから良かったものの、もう少しでカルピスを溢すところだった。

「一咲」と、呼ばれて振り向けば…


「こっちおいで」

抱き寄せられた。

「危なっかしいな」


頭上に転がる聞き慣れた低音に、瞼をゆっくり閉じる。肩口に回されたあやちゃんの腕は解けないまま。