甘々とロマンス中毒

今までの俺だったら相手が恋人だろうとも、こんなことしなかった。そう言うの苦手だからやめろ、なんて突っぱねたこともある。

「…………(一咲だったらいいって、わかりやす)」

俺にとって一咲が“特別”なんだと、改めて実感した。

「(それにしても…)」

脳裏を浮かび上がる記憶が、ずっと離れないでいる。

千花と仲良さげに会話をする一咲の横顔。
一咲を前にして、涼しげな目を優しく細める千花の横顔。

絶対好きだろ、アレは。


「めんどくせーな」


腹の底に溜まる黒い塊を吐き出した。それは、先の見えない苛立ちを吐露しただけでは、どうやら消えないらしい。柄にもなく胸が掻き乱される。

「あ゛ー…クソ」

千花が面倒なわけじゃない。
しょーもない大人のプライドが面倒でクソだってこと。

立ち上がって冷蔵庫を開けた。アルコール類は一つも並んでおらず、あるのはペットボトルの水だけだ。昨日、スーパーでビールを買わなかった自分を恨む。

徐にズボンのポケットへ手を入れた。がさり、と小さな箱の感触に当たり、あ…と思い出す。
ため息が多いことを指摘されて「気分転換しなよ」と、伊吹から煙草を貰ったのだった。

それを口に咥えて火をつける。
ゆらりと煙を燻らした。

まだ、一咲の横顔が焼き付く。


「重症だな」


嫉妬で気が狂いそう。