甘々とロマンス中毒

一咲を好きになった時点で、千花がライバルになるのは分かりきってたことだけど…他の(やつ)に手出されるよりマシか。

息を吐いた後「一抜けするわ」と、千円札をテーブルに置く。既に飲み終わったアイスコーヒーの氷は半分、溶かかっていた。

「どこ行くの?」尋ねた伊吹に返す。「一咲のとこ」と。今さら隠す必要もないので、前髪をくしゃりと掻き上げ、こうも続ける。


「大事な子だから迎えに行ってくる」

「お!」
「ふうん、そっか」

︎︎𓂃⟡.·

3LDKの部屋に戻ると、付けっぱなしの冷房が体に当たった。室外との寒暖差に思いの外、驚く。
今日も真夏日であることは、今朝のニュースで知っていたが、最高記録を更新してるのではないかと錯覚するほど蒸し暑い。

右手に提げた土産袋は帰り際、一咲が渡してくれたもの。

「あやちゃんのお土産です。少しだけど…どうぞ。へへ」と、照れくさそうに頬を輝かせていた。

ひと段落したところでソファに腰掛け、中身を開ける。

パステルブルーのギンガムチェックで包装されているラスクと、テーマパークのイメージキャラクターである、うさぎのぬいぐるみストラップが覗いた。

まあるい瞳にビタミンイエローのリボンが留まる。
かわいい子のリュックで揺れていた、もうひとつのストラップと面影が被る。一咲のは淡いピンクのリボンだった。

一咲が動く度、そのうさぎは、ぱたぱたと左右で踊っていたんだっけ。ふ、と口元が綻んだ。


「(一咲とお揃い……なんか、いいな)」


細いチェーンを人差し指にかけて持ち上げる。
ミニショルダーに付けた。