甘々とロマンス中毒

「マクドで食ってから、ゲームすんだろ?行くぞ」

我先にと、菖くんが家とは反対方向へ歩き出す。

「じゃあな」言い足して去る後ろ姿はまるで夏の嵐である。「……う、ウン。ばいばい」と、返した私のか細い声、菖くんに届いたかなあ。


「そう言うわけなので、今日はやめときます」

千花くんがあやちゃんに向かってお辞儀をした。

「一咲ちゃん、またね」


ひらり。次いで、腰を軽く折った格好で爽やかに手を振る。

私も千花くんに……と手を挙げようとしたとき、大きくて広い背中が目の前を覆った。


「ま た ね。チカくん」


あやちゃんが私の前に立って視界を塞いだのだ。
わわっと慌てふためき、心臓がどきっと跳ねて。少しの間を置いて、あやちゃん越しに千花くんを覗く。

「……ちかくん、ばいばい」

手を振った頃には、あやちゃんと対照的な細身の背中が遠くに見えたのだった。

一件落着……?

ふう〜…。息を零したの。

隣に並ぶあやちゃんを横目で眺める。
甘い蜂蜜色の、キラキラした前髪を掻き上げるあやちゃんの瞳が私を見つめた。

こと、と首を倒す。半歩、あやちゃんに近づいてゆっくり窺う。

「!?」

その瞬間、言葉を交わさず静かに抱きしめられた。


「キャ…!あやちゃ……!ちょっと〜〜っ」


肩口に乗っかった頭。あやちゃんから漂うローズマリーが私の首筋を掠める。

くすぐったさに身じろぎしたいのに、正面から抱きしめられてるので、逃げ場がなくて。胸の鼓動も、呼吸の音も一定のリズムを崩している。

あやちゃんだから、全然イヤじゃない。
なにも言わずに、こうやって突然抱きしめられるのも、あやちゃんだから良いの。