甘々とロマンス中毒

「菖くんの挑発に乗らないんだから!」なんて、両頬に溜まった小さな不満は、淡い熱と共に萎んでいく。そらした顔を、ゆったり菖くんへ戻した。

「ん。土産」と、菖くんがあやちゃんに渡したのは随分と大きな紙袋だ。胸中で、なあに?と私は首を傾げる。あやちゃんは「さんきゅ」と右手で受け取った。

抱きしめられていた腕が解けて、あやちゃんが自然と私から離れる。


『べ!』

悪戯に赤い舌が覗いた。菖くんからの仕返しだ。

『ん〜〜〜ぅ…っ!』

わわ…っ。あやちゃんへのお土産、先越されちゃった!がーーん……。


咲に勝ったと言わんばかりに、ふ…と意地悪く笑った。ぽろぽろ崩れる私を横目にして、何食わぬ顔で続ける。


「千花を引き取っていい?」

「おー、頼む」

「は…?オレは一咲ちゃんに話したいことがあるんだけど、二人で勝手に決めんなや」

一層、不満げな千花くんへ、菖くんは眉根を寄せる。

「今のオマエは間が悪いんだよ。大人しく引いとけ」

「仕方ないだろ。目の前に、あやみさんがいるんだから」

「だ〜か〜ら〜聞けっての!」


そう、押し通された千花くんは、ぽつり。なにかを囁いた。傾げた私の首は更に横へ倒れる。


「…でも、確かにな。告白のタイミング見誤るところだった」


街中の、しかも駅の大通り。時間は昼間。
車が走行する音や街行く人たちの話し声で、千花くんの“なにか”は掻き消された。