甘々とロマンス中毒

「そうなんだ?」

千花くんの猫目がまあるい弧を描く。
うんっ、と力強い私の頷きに、とびきり優しい表情を見せるの。

他の子が目に留めれば、きっと恋の合図になりそうな、そんな色を宿している。


「ボタン押して、ぱって離したとき体が傾くから」

「えー……と。それは……」

言葉を詰まらせる千花くんにすかさず口を出し…

「千花くんはならない?」

「ならない、かな。多分」

「(がーーーん。やっぱり私だけなんだ)」


胸に届いたのは気遣いの塊と、ゲームの効果音。プラスして、私にだけ見える大きなお星様が、ぽこんって頭に直撃した。


「………(む、ぅ。ぐ〜〜。あやちゃんはなにも言わなかったし、ヘンだって笑わなくて慰め……ア)」


記憶に新しい先週の『一咲便〜マリカー大会〜』を思い出して。ただ単に、あやちゃんから甘やかされてただけって事実に顔がぽかぽか熱くなる。

ふわり、脳内で色づくあやちゃんのこと。
妄想に耽ないで、ともう一人の私が外側から頭の横を叩く。落っこちたお星様は砕けて星屑となる。

「ねえ」と、千花くんが歩幅を狭めた。足音が止まり、私の正面に立つ。真夏日のアスファルトから熱気が湧いて、肌が焼けそうなほどに痛んだ。

「こんど———」

“今度”

その続きを待つ一瞬、体が浮遊感に襲われた。


「一咲」