甘々とロマンス中毒

「千花くんは役が当たってるの?」

「一応………」

言い淀む千花くんは、柄になく歯切れが悪い。
じい…と目を凝らした。

「王子役」

ふいと顔ごとそらされる。

「!!」
「…………(うわ、はず…。言うんじゃなかった)」

「わ…っ。千花くんがするんだ〜〜!すごいね。ぴったり。ふふ」


口元を弛ませ、笑う私は拍手を送る。ほんのり朱色に色づいた千花くんの頬が、ゆっくり中心だけ濃くなっていく様子を、どうしてかな?と不思議に感じたのは、私だけの秘密である。

千花くん曰く、他に候補者として上がっていた菖くんは、こころちゃんたちからの誘いを一蹴りで断ったようだ。

菖くんバージョンの王子様も見てみたかったのに残念。

うーーん。でも、菖くんだと裏のありそうな意地悪王子様になりそうだから、千花くんがやって正解なのかも。

単純な思考と妄想を交互に巡らせて、氷が溶けた抹茶ラテを飲む。甘めのミルクが私の子ども舌にちょうど良い。


「お姫様は誰がするんだろ。もう、決まってたりするのかなぁ」

あ…っ!と片手で口を覆った。

「コレも内緒…?」
「まだ決まってないよ」

そっかぁ。私は裏方がいいな〜。
人前に出るの得意じゃないし、演技も苦手だし…。

ほわほわ〜。すっかり気が緩んで敬語も取れた私は、自然と口数が多くなって。


「オレは一咲ちゃんを推薦したい」

「……」

「……んだけど、ヤダ?」

「ええええっ」


今日一番の大きな声を張った。遅れてやって来た菖くんが「うるせー」と、ドリンク片手に千花くんの隣へ、長い脚を放り出して座るの。

東京行きの新幹線はすぐそこ。千花くんの溢した衝撃に小さな眩暈を覚えた。