甘々とロマンス中毒

「ナイショね。演劇部の子以外は、まだオレと一咲ちゃんしか知らないからさ」と、人差し指を立てる千花くんが悪戯に微笑む。

そんな大事なこと私に話して良かったの……かな?


水無瀬(みなせ)さんたち、すげえ張り切ってた。伝統らしいよ」

「?」

「1年2組は毎年、文化祭の出し物は演劇だって決まってんの。一咲ちゃん、聞いたことない?」


千花くんへ頷き返した。揺らめかせた視線を持ち上げると、顎先が、ちょこんと上を向く。

学内の噂話やクラス内のルールに疎い私は、千花くんから受け取る情報の全てが初耳なの。


「演目は“眠れる森の美女”(って、言っておこ。他にも候補あるけど)」

「(演劇かぁ。どんな感じになるんだろう…?眠れる森の美女は、オーロラ姫……だっけ)」


ぽか、と薄く開いた唇から『ふぇ〜…』なんて、微かに漏れる可笑しな日本語。同時に、ある日の放課後の風景が脳裏を過った。

「……あっ!」

そう言えば先週、こころちゃんたちに衣装作るから手伝ってって言われたんだった!

ハテナのピースが合致した瞬間。

好奇心と不安を半分こ。千花くんに恐る恐る質問した。