甘々とロマンス中毒

「一咲ちゃん」

「!!」

名前を紡ぐのは、透き通っていて、すっと耳に馴染む爽やかな声。たった一瞬で乙女心に舞った私の意識が呼び戻された。

いち、心臓が大きく跳ねる。
に、上擦った肩が震える。

咄嗟の判断でLINEを閉じた。ころんとした声音の主は「いさく、ちゃん…?」と心配そうに言う。

淡い幸せに緩んだ唇を結んで、伏せた瞼を持ち上げた。その先には千花くんがいて。

「はい。どーぞ」

ストローを差した抹茶ラテを渡す。
「ありがとう」と、もぞもぞ受け取った。

正面に腰掛ける千花くんへ辿々しい視線を送ると、意味深げに微笑むので、やっぱり私は俯いてしまったんだ。


只今、新幹線を待つ間、安定のスタバに来ています。


こっくり深いチョコレートブラウン。ふわふわの柔らかな髪が私を覗き込む度に、目の前で揺れる。

隣の席から囁かれる「あの子、かっこいいね」って相手は千花くんで間違いないの。「やば〜〜。かっこいい…」ほら、背後からも同じ言葉がぶつかった。


「荷物、オレの方に置いていい?」

言いながら、私のキャリーバッグを千花くんがさっと自分の元に移動させる。「こっちのも貰うね」と両手に提げたお土産も。


「すいません。ありがとー…ございます。あの、美羽ちゃんと菖くんは…?」

ん?と、千花くんが小首を傾げた。

「まだ、買い物中。……あ、菖からだわ。今、二人で向かってるところだって」

「……そうなんですね」