甘々とロマンス中毒

「一咲の手、ちっちゃくてかわいいね」

———…エ。……………え?

「ひゃあっ」

行き着く先は私の掌。冷風に晒されたあやちゃんの熱が私の肌に移る。

ことこと。かわいいリズムが刻まれて、心音がゆったり体を駆け巡った。

「(今日のあやちゃんは、甘やかしモード……なの?)」

見目麗しい王子さまは、なにも言わず、ただ私の手を包む。

にぎにぎと、ふみふみと。柔らかいのに、ときどきくすぐったい。気恥ずかしくて、チークを濃くしたみたいに、頬が内側から赤らむの。

僅かに、私の指先を握るあやちゃんの力が強まって。結んだ唇の端が嬉しさに溢れて緩みそうで。

……はっ!“ふにゃ”ってなってる場合じゃない…っ。

「〜〜っ。ね、ネエ。……菖くん、どうしたの?」

「ん?」

問うた矢先、あやちゃんは首を傾げた。黄金比の角度で顔ごと覗かれると、一咲のこころは早鐘になる。口角はむずむずと解けてしまうし、視線も俯きがちになりそう。

色っぽいあやちゃんはよろしくないのです。

わ…ぁ。こてんってしてるあやちゃん、いつもより大人びてて困るなあ。

「近くまで来てるから寄るって(用件終わったら、すぐ帰らそ)」

菖くんへの心配は即座に解消された。
………だけど、

「そっかぁ」

一安心とは裏腹に、私の言葉は丸い弧を描いた。