甘々とロマンス中毒

頭を撫でられたくすぐったさも、だんだんと大きくなる心臓の鼓動も、鼻を掠めるローズマリーの香りも、全部、ぜんぶ…愛おしいって、私の恋心が初めて感じた。

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

剥がれていく、ひとつの体温。
あやちゃんが私から体を離した。

黒曜の眼差しがいつもと違う熱を孕んでいるのはどうして?

甘やかな余韻に、涙の跡で濡れた顔が、柔らかな朱色を灯している気がするの。

———今の俺は、一咲しか見てないよ

あやちゃんが私を見てる…の?おちたって。

心の片隅でハテナを浮かべる。ぽこぽこと、幾つも転がったけど、曖昧な疑問の答えは掴めないまま。

「(どう言う意味?)」

聞いてもいいのかな?


「あやちゃ…ん」

言ったところで、ある印が目に留まった。

「!……ごめんなさい、リップ付いちゃった」


コーラルピンクのティントが、色薄く、あやちゃんのシャツに移っている。胸下の滲んだ円がやけに目立つのは、あやちゃんが着ている服が白だから。

汚さないよう、注意を払ってずうっと下唇を噛んでいたのに…。

「(……あ。あのとき)」

きっと、あやちゃんにぎゅって抱きしめ返した瞬間、安心して、こころが緩んじゃったんだ。


「いーよ。大したことないから気にすんな」


目尻に流れた私の前髪を、人差し指で攫うあやちゃんが、さらりと撫でつけて。「なあ、いさく」と、低くいまろやかな音を溢した。


「ほんとは、欲しいんじゃねえの?」


あやちゃんの眺める先は、大きな箱に閉じ込められた小悪魔うさぎ。強がって“いらない”って跳ね返したんだった。