溺愛銃弾 〜メルティ・your・バレット~

支倉の家を出たあの夜。運転するのが玉置さんじゃない車も初めてだった夜。

三列シートの一番うしろに荷物を積み、赤ちゃん用のチャイルドシートが付いた二列目に、抱っこした一花と座った。

エアコンが効いて温かったのに、心臓の真ん中へんが寒くて、足の爪先はなんだか感覚がなかった。

助手席に乗った陶史郎さんがときどき振り返る仕草で、優しく話しかけてくれたけど、なんて答えたのかひとつも憶えていない。

途中で一花が泣き出したのを一生懸命に寝かしつけてるうち、いつの間にか車が停まってスライドドアが外から開いた。

『樹、僕達の家に着いたよ』

ロビーみたいな、ガラス張りの広いエントランス。ダウンライトにエレベーターへと案内され、陶史郎さんは『7』の数字ボタンを押した。

見覚えのないマンション。前に、少しだけ一緒に暮らした場所と違う。

静かで自分達のほかに誰もいないような。まるで別の世界に来たような。お義母さんや玉置さんともう二度と会えないんだ。・・・と思った。

心細さしかなかった。言えなかった。

吸っても吸っても、息が苦しかった。言えなかった。

陶史郎さんが笑ってたから。