『‥‥また何か悩んでおるのぉ‥。』

17時を過ぎてもまだ暑さの残る庭園で
、勤務を終えた私は小久保さんと一緒に水やりをしていた。

ここに来て、いつの間にか相談相手になってくれている瑆さんのお父さんは、
私が何も言わなくてもいつも声をかけて
気に掛けてくれる優しい方だ

「‥‥勇気が出ないんです。過去の
 事なのに、真実を知るのが怖くて、
 大切な人の気持ちに応えられない
 ままの自分が嫌になってます。」

あの日以来、支配人はあの事について全く聞いて来ない‥‥

きっと私が言うまでは下手したら何週間、何ヶ月経っても聞かない人だと
思ってる

私を踏みとどまらせているのは、私の中に生きる鈴子でもあるけれど、真実を知って、それが鈴子にとって聞かなかった方がいい事かもしれないと思うと、簡単に返事ができないのだ


『過去を知ったとして、鳥山さんは
 消えないじゃろう?』

えっ?


『過去は過去。今、真面目に働いて、
 笑顔で過ごして居る姿は全て
 あなたが積み上げて来た時間で
 作られたはずじゃ。何かを知ったと
 しても今の鳥山さんだけは変わらん。
 受け入れられなかったとしても、
 あなたの芯の強さはそう簡単には
 曲がらんよ。』

小久保さん‥‥‥