見渡す限りの美しい緑の木々。
その隙間から差し込む木漏れ日が照らす
砂利道を歩けば、自然と気分が上がる足音にくすぐったさを感じる。
こんな場所で毎日過ごせたらどんなに
幸せだろうか‥‥。
専門学校を卒業して、都会の有名なホテルに勤めたもののあまり楽しいと思えず、気持ちを誤魔化しながら5年勤めてみた。
立派なホテリエになりたかったからだ。
でも、頑張れば頑張るほど日々のイジメが加速し、食事は喉を通らず、退社を決意する頃には食べ物の味までしなくなったのだ。
そんな時、気分転換にと友人に誘われて息抜きにやってきたのが、山奥にある、
ここ『Passage du vent』だった
一言で言えば、非日常。
私が私らしくいられて、深く呼吸出来ると思える場所だった。
そして、そんな環境で食べた料理は、どれも久しぶりに味を感じることが出来たのだ。
理由は今でも分からないけれど、
ここで過ごした2日間は、生きてきた
人生で1番と言えるほど素晴らしい
日になった事は確かだと思う
「はぁ‥‥‥緊張してきた‥‥。」
リクルートスーツに身を包み、襟元をギュッと握り締める。
面接の時間までまだ30分以上あるな‥



