華狐の嫁入り ~離婚を申し出た途端に旦那様が現れました~

「俺の華狐は、もう芹香にしか務まらない」
「それは、どういうこと」
「霊力の高さは、二の次でしかない。一番大切なのは、霊狐と華狐が互いに心を交わすこと」
「心を、交わす……」
「想い想われ、互いに心を明け渡して初めて番が成立する。だから、いくら霊力が高い女子(おなご)がほかにいても、俺の華狐にはなれない」

 そこで、紫苑は自分を落ち着かせるように息を吐く。そして、まっすぐな瞳が芹香を射貫いた。

「なぜなら、俺の心は、もうずっと前から芹香のものだから」
「──っ」

 告げられた愛の告白に、芹香は息を呑んだ。
 洞窟で、紫苑が亮二に「お前の娘は華狐にはなれない」と言っていた理由はこれだったのだ。紫苑の想いに、芹香の胸には歓喜が込み上げてくる。

 芹香は、紫苑が霊狐だと知り、華狐としてそばにいて欲しいと乞われてから、ずっと考えていた。

 自分にとって、紫苑はどのような存在なのかと。

 鳥居をくぐって、初めて会った紫苑は小さくて可愛い子狐で、……飼い猫みたいな……そんな存在だった。
 あの頃の紫苑は、霊力が不安定で人の姿にはなりたくてもなれなかったんだと、後で伝えられた。葉奈と世津には、頭の中に直接話しかける念思という方法で会話ができていたみたいだけど、芹香はそれを聞くことができなかった。

 どんどん大きくなってからは、なんていうのかな……、守られてるような安心感があった。