華狐の嫁入り ~離婚を申し出た途端に旦那様が現れました~

 継ぎ人、とは人と妖の間を取り持つ者のことだと教わった。国中を放ろうする商人の中にまぎれ、妖に願いを叶えてもらいたい人間と、願いを叶える代わりに対価を得たい妖の仲介をする者だという。

 五年前、亮二に鵺を紹介したのがその継ぎ人だった。さらに、霊狐の里にいる芹香に亮二からの手紙を渡した狐も、継ぎ人が関わっていた可能性が高いという。
 配下を使って継ぎ人の足取りを追っているが、まだ見つかっていないと紫苑は悔しそうに眉をしかめた。芹香は「いいの」と首を横に振る。これ以上、自分たちのような被害者が増えないことを願うばかりだ。

「いろいろと、ありがとう紫苑」

 感謝の気持ちを言葉にして伝える。芹香の思いを受け取り、紫苑は深く頷いた。

 紫苑には、感謝してもしきれない。
 紫苑は事件の後始末に奔走しながらも、芹香のことも気にかけてくれて、毎朝庭で摘んだ花を贈ってくれた。そのさりげない心遣いが、とても愛しく感じる。
 芹香はそれを栞にするために一輪ずつとって押し花にしている。

 それだけじゃない。
 霊狐として名乗る前の一年間、思えば紫苑はずっと芹香のそばにいてくれた。
 両親のことを思い出して一人悲しみに暮れているときも紫苑は静かにそばにいて、芹香が手を伸ばせばその身を摺り寄せて慰めてくれた。
 たとえそれが、受け継いだ霊力を馴染ませるためだとしても、結果として芹香の支えになったことは間違いないのだ。

「すまない芹香、辛いことを思い出させてしまったな……」

 紫苑が、申し訳なさそうに言った。それは芹香の頬を濡らす涙のせいだろう。
 芹香は、頬を伝う涙を手でごしごしと拭いながら「違うの……そうじゃないの……」と続ける。