華狐の嫁入り ~離婚を申し出た途端に旦那様が現れました~

「そ、んなぁ……あぁ……ああぁ……」

 ぽたり、ぽたり。
 薄暗い地面に涙が落ちて弾け、岩にしみ込んでいく。
 いくつもの黒いシミが重なり、どんどん広がっていった。

 両親は、実の弟夫婦に殺された。なんて惨い仕打ちだろうか。
 憎い。
 叔父たちが、憎くてたまらない。

 地面の黒いシミのように、芹香の心の中で憎悪が膨れていく。
 それを助長するかのように鵺が口を開いた。

「あやつは、如月の当主になりたかったんだとよ。お前の両親は、そんなことのために俺たち鵺に食われたんだ」

 ──可哀そうになぁ。

 しゃがれた声の囁きを聞いた瞬間、芹香の中でぷつりとなにかが切れた音がした。

「あああああああああぁぁぁ!」

 突如叫んだ芹香は怒りに支配され、正気を失っていた。
 芹香の体の周りを、黒い靄が覆う。
 鵺は「ほう」と目を見張り、面白そうに目を眇める。
 亮二たちはその覇気に震え、後ずさる。