*
婚儀まであと三日となった日の午後。
葉奈は仕上がった打掛を取りに出かけ、紫苑は用事があると昼過ぎに出ていき、屋敷には世津と芹香しかいなかった。
二人はいつものように縁側に腰かけて、春の暖かな陽気の中雑談に花を咲かせていた。
そして、世津が夕飯の支度をしに台所に立った後もしばらくそこに座って美しい中庭を眺めていると、草の踏まれる音がして来客を知る。
いつもなら、玄関で声がかかり葉奈か世津が気付いて対応するのだが、世津は台所にいるから聞こえなかったのだろう。
おずおずとこちらを伺う人影に、芹香は「こんにちは」と声をかけた。
「は、華狐さま」
これまで見たことのない女性だった。
狐の耳をつけているから一族のものなんだろう。芹香は笑顔で彼女を出迎える。
「あの、こ、これをお読みくださいっ」
早足で近づいてきたと思えば、折りたたまれた簡素な紙を突き付けられるようにして渡された。芹香は、それを受け取り、中を見て息を呑んだ。
「こ、この手紙は誰から⁉」
パッと顔を上げて聞いた芹香だったが、そこには誰もいなかった。
さっきの女性は、一体。
芹香はもう一度手紙に視線を落とし、一言一句違えぬように見た。
『親の死の真相が知りたければ、一人で屋敷に来い』
書かれた言葉に、芹香の胸は異様なまでに早鐘を鳴らし始める。
そして、気付いた時にはその手紙を握りしめ、駆けだしていた。
婚儀まであと三日となった日の午後。
葉奈は仕上がった打掛を取りに出かけ、紫苑は用事があると昼過ぎに出ていき、屋敷には世津と芹香しかいなかった。
二人はいつものように縁側に腰かけて、春の暖かな陽気の中雑談に花を咲かせていた。
そして、世津が夕飯の支度をしに台所に立った後もしばらくそこに座って美しい中庭を眺めていると、草の踏まれる音がして来客を知る。
いつもなら、玄関で声がかかり葉奈か世津が気付いて対応するのだが、世津は台所にいるから聞こえなかったのだろう。
おずおずとこちらを伺う人影に、芹香は「こんにちは」と声をかけた。
「は、華狐さま」
これまで見たことのない女性だった。
狐の耳をつけているから一族のものなんだろう。芹香は笑顔で彼女を出迎える。
「あの、こ、これをお読みくださいっ」
早足で近づいてきたと思えば、折りたたまれた簡素な紙を突き付けられるようにして渡された。芹香は、それを受け取り、中を見て息を呑んだ。
「こ、この手紙は誰から⁉」
パッと顔を上げて聞いた芹香だったが、そこには誰もいなかった。
さっきの女性は、一体。
芹香はもう一度手紙に視線を落とし、一言一句違えぬように見た。
『親の死の真相が知りたければ、一人で屋敷に来い』
書かれた言葉に、芹香の胸は異様なまでに早鐘を鳴らし始める。
そして、気付いた時にはその手紙を握りしめ、駆けだしていた。

