華狐の嫁入り ~離婚を申し出た途端に旦那様が現れました~



 とても平和な日々が続いていた。
 出禁が解かれた今、霊狐の屋敷にはちらほらと人の、狐の出入りがあり、芹香も顔見知りが増えて交流を持っている。山菜をおすそ分けしてくれたり、煮物やお菓子を作ったからと包んでくれる人たちもいて、以前よりにぎやかになった。

「芹香、それはなんだ?」
「あ、紫苑。これはこしあぶらっていう山菜よ。てんぷらにするととっても美味しいの」

 つい今しがたもらった山菜の籠を紫苑が覗き込んで目を眇めた。

「また弥助か」
「そうよ。弥助さんは山菜採り名人ね」

 籠一杯の山菜を、惜しげもなく分けてくれる弥助は、紫苑よりも年若く屈託のない笑顔が好印象の気のいい少年だ。
 親からの言い付けで山菜を採りに行っており、たくさん採れるとわざわざ屋敷に届けにきてくれる。この前はわらび、その前はフキノトウだった。

「わっ」

 急に後ろから紫苑が芹香を抱きしめてきて、持っていた籠を落としそうになる。頭に紫苑が頬ずりすると、いつものひだまりの香りに包まれた。

「……面白くない」