夏と先生と初恋。

まだ少し覚束ないところもあるけれど、2ヶ月前まで初心者だったとは思えないような葵ちゃんの演奏。


弱気になってしまいそうな自分を押さえ込んで、前を向く。



「竹中ひまりです」



深呼吸してからもう一度息を吸って、楽器に息を流す。


…まずまず、ってところだろうか。


良くも悪くも想定通り。


完全に練習通りとは言えないけど、問題やなるほどのミスはない。


最後まで吹き切って、譜面から顔をあげる。


藤木先生と目が合った、と思ったのに、次の瞬間には視線をそらされてしまった。


…いつもの藤木先生と違う。


いつもなら、ふわりと優しく微笑んでくれるはずなのに。


藤木先生も、本気なんだ。


それに、やっぱり私は、藤木先生のことが————



「じゃあ、音楽室に全員集めてくれる?」



…ソロオーディションだ。


ソロオーディションは全員の前で演奏して全員に審査してもらう。