夏と先生と初恋。

それぞれが磨きをかけたソロのフレーズ。


同じ楽譜をもらったはずなのに、雰囲気も、音色も、それぞれで全然違っている。


“このままだと、落ちる”


そんな確信に近い不安が常にわたしの頭の端に居座っている。


ソロを『わたし』が吹く意味がなくちゃいけない。


わたしにしかできない、唯一無二のソロを作らなくちゃいけない。


そうじゃなければ、わたしは———


そう思えば思うほど、正解が、『わたしらしさ』が、わからなくなる。


吹いても吹いても、練習しても練習しても、全然足りていない気がして、怖くなる。


『わたし』のソロってなんなんだろう。




✳︎ ✳︎ ✳︎




「なんかお前の音、違う」


「…え?」



珍しく、真面目な様子の涼。



「ひまりらしくない」


「っ!」



知ってる。


そんなことぐらい、自分でわかってる。



「もっと吹きたいように吹けよ」



違う。


吹きたいように吹くのはただの自己満足。