夏と先生と初恋。


確かにクラリネットは大好きだけど…


クラリネットオタクって…



「だから違うってー」


「まぁまぁ、そういうことにしておきますか」



にやっと笑った沙耶に顔を覗き込まれる。


だから違うのに。



「わたしはひまちゃんの恋応援するからね!


言いたくなったらいつでも言って!」



…沙耶の中でわたしに好きな人がいるのは確定らしい。


これ以上何を言っても無駄な気がする。



「…」


「お、ひまりじゃん」


「…涼」


「今から帰り?」


「そうだけど」


「んじゃ俺も帰るわ」



いや、別に合わせなくてもいいんだけど。


喉の奥まで出かけた言葉を飲み込む。


せっかくの沙耶と涼が話せるチャンス。


わたしのせいで無駄にするわけにはいかない。



「沙耶も涼と一緒でいいよね?」


「———うんっ!」



嬉しそうに笑う沙耶。


だけど。


このときのわたしは、一瞬だけ沙耶が見せた悲しそうな顔に気がつくことができなかった。