先生が自分の楽器でお手本を見せてくれる。
「こう、ですか?」
「うーん。ちょっと違うかな」
藤木先生がクラリネットを置いて立ち上がった。
「ここを、こう」
耳元で聞こえる藤木先生の声。
「っ!」
わたしの手に重ねるようにして、藤木先生の手が後ろから伸びている。
指と指が触れ合う。
さっきまでなんともなかった心臓が、異常な速さで動き始めた。
「どう?」
「…え?」
いつのまにかわたしの指は藤木先生に動かされて、普段と違う位置になっている。
持ち方はもう変え終わったのに、藤木先生はわたしの後ろから動く気配がない。
これじゃあまるでバックハグだ。
程よい高さの男の人の声がダイレクトに聞こえる。
「竹中?」
「っ、だ、大丈夫、です!」
「本当?ならよかった」
大丈夫かなんてわからない。
それどころじゃない。
