夏と先生と初恋。

「はい」


「こういう練習の方法はどう?」



藤木先生がクラリネットを構えた。



「…すごい」



藤木先生が鳴らす音は、わたしと同じクラリネットを吹いているとは思えないくらい、綺麗で、良く響いている。


わたしも、こんな音で吹けるようになりたい。


藤木先生は平然とやっているタンギング練習だけど、実際吹くのはめちゃくちゃ難しそうだ。



「よし、やってみよう」



…飛び出した音は不揃いでぐちゃぐちゃ。


最初から上手くできるわけはないけど、これはさすがに酷すぎる。



「うん。練習だね」



その通り過ぎる。



「……竹中、手、痛い?」


「え?」



手?


自分の手に視線を落とす。



「右手の親指」



右手の親指は、楽器の重さのほとんどがかかる場所。


クラリネットを吹く人なら、だいたい痛いと思っているはず。



「痛い、です」


「こうやって持ったらどうかな?」