夏と先生と初恋。

荒削りで、上手くできてていないところのほうが多いくらいの演奏だけど、みんなで一つになるような感覚が心地いい。



「はい、ストップ。


木管と金管でずれてるよ。


ここの主役は金管だから、木管は金管の飾りになって」



少しだけ眉を下げて話す藤木先生。


普段の授業ではにこやかに笑顔を絶やさない藤木先生だけど、部活のときだけこの表情を見せる。


わたしたちだけ見ることができる表情、という特別感があって、藤木先生のこの表情が好きだ。




「じゃあもう一回やろうか」



だめだめ、こんなこと考えていないで合奏に集中しないと。


再び始まった音楽がどんどん流れてゆく。


…次はクラリネットのソロだ。


今日このソロを吹くのは———


わたし。


ソロは何回吹いても慣れることはない。


毎回こわいし、不安になる。


だけど、わたしはこの旋律を、絶対にわたしのものにするって決めたから。