「終わっちゃったね」


ペンギンのお守りを持った


次期幹部たちがいなくなってから数分。


明日から私たちが部活に行くことはもうないんだ。


入部してから2年と少し。


朝から晩まで部活のことを考えていた2年間だった。


そして、私たちからバトンは繋がれた。



「大丈夫。みんなならきっと」



横に並ぶのは、共に2年間を走り抜けた幹部たち。


いや、今となれば元幹部。


長かったようで本当にあっという間の2年間だった。


後悔はない。


あとは、私が選んだ道をまっすぐに走り抜けるだけだ。


でも。


ひとつだけ、不安が残るとすれば————



「梨香」



真っ直ぐで、誰よりも本気で、


そしてなにより、とても不器用な


クラリネットのパートリーダー。


勘違いされやすい梨香が、


その性格故に、辛い思いをしているところは


たくさん見てきた。




『梨香とひまりたちの未来が


少しでも、明るいものでありますように。』




きっと元幹部の思いはこれだけだ。


ぶわぁっと、緑の気配を感じさせる風が吹く。


その風に〝もう行け〟と


言われているような気がした。


その風を胸いっぱいに吸い込んで、


私たちは新たな道へ歩き出した。