夏と先生と初恋。

軽快なピッコロソロが先頭を駆け抜ける。


課題曲1番の名前はディスコ・ドリーム。


テンポが早く、軽快で疾走感のある曲だ。


今年の課題曲のなかで、1番の難曲といわれている。


…なにかが、違う。


初めての合奏特有の拙さはあるものの、


何かが今までの合奏と決定的に違う。


そんなことを気にしている暇もなく、


曲はどんどん進んでいく。



——-違うのは、先生だ。



藤木先生の指揮に引っ張られるように、


この音楽室に小さな世界ができていた。


わたしたちは、ディスコ・ドリームという、


一つの、小さな曲の中で生きていた。


拙くて、脆くて、


今にも壊れてしまいそうな世界だったけれど、


確かに今、


わたしたちはディスコ・ドリームのなかで生きている。


藤木先生に生かされている。



〝 クラリネット、主役だよ。出ておいで 〟



藤木先生は何も言わない。


それなのに、藤木先生の求めるものの全てが、


指揮から伝わってくる。


藤木先生とわたしたち部員、


全てが溶け合って一つになるような、


そんな感覚だった。


最後のトランペットの高音が伸びて、


先生が指揮を止める。


気がついたら、曲が終わっていた。