夏と先生と初恋。

書き忘れとか、ないよね?


葵ちゃん、あんなに頑張ってたのに。



「メンバーはこの55人でいこうと思う。それぞれ思うところはあると思うし、納得いかない人もいると思う。だけど、このメンバーが俺の考えた最善だよ」



優しいようで残酷な言葉。


引かれたボーダーライン。


コンクールメンバーという言葉の重みがのしかかってくる。



「じゃあ、ソロオーディションの結果も伝えるね」



その言葉に、ピリリと緊張が走る。


視界の端に映る梨香先輩の顔もこわばっている。



「今年のコンクールでクラリネットソロを吹くのは————


竹中ひまり」



呼ばれたのは、わたしの名前。



「—-っ、」



藤木先生が真っ直ぐにこちらを見ている。


まさか、わたしの名前が呼ばれるなんて。


あのソロをわたしのものにしていいなんて。


一気に嬉しさが込み上げてくる。


コトリ、と何かが落ちた音がした。


その音で、はっと我に帰る。


視線の先には、唇を噛み締める紗希先輩。


紗希先輩が音楽室を出て行く。