虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。



その時、2週間の収支報告を見たレナード様が、宣伝費のゼロが2つ足りないと言ったのだ。

「そんな、失敗するかもしれないのに大量の宣伝費などかけられませんよ。というか、もう失敗してしまいました。事業をするのって難しいのですね」
私は自分の力を試したいと思っていたが、そんな力などなかったと打ちひしがれていた。

「せっかく、良いアイディアなのに知ってもらえなければ勿体ないですよ。侯爵邸のお金を使い切るくらい宣伝費をかけても良いくらいです。ミリア、自分のしてきたことに自信を持ってください。私の初めての事業は失敗しましたが、ミリアの事業は失敗などしないと私は確信していますよ」

彼が事業に失敗した話など聞いたことないから、これは私の為についた嘘だろう。
でも、私もやってきたことが無駄になるのが嫌だったので、私は宣伝費を彼の言う通りに増額した。

すると、瞬く間に貴族はおろか平民の間でも話題になり刺繍サービス事業は軌道に乗った。

平民が自分が買った既製服に、名入れしたいと刺繍サービスを利用するとは思わなかった。

私が想定していた以上の、需要がこのサービスにはあったのだ。
私に平民の知り合いなんていないから彼らが何を思っているのか、どんなものを求めているのか分からないのかもしれない。

「あっ、ポール⋯⋯」
私はふと元第4皇子が、現在平民であることを思い出した。
ポールとは私が彼に与えた平民の戸籍の名前だ。

「ミリア。ポールとは誰ですか? 私の推測が確かなら、あなたと唯一踊ったと言う元第4皇子の現在の名前でしょうか?」

1ヶ月過ごして分かったが、レナード様はやはり切れ者なのだ。
彼曰く、私は人に興味がないらしい、私は自分は人のことばかり気にしていると思っているから意外な評価だ。

そんな私が突然出した男の名前だから、私にとって重要人物だと思い元第4皇子ではないかと推測したのかもしれない。

正直、レナード様は政敵である父に落とせるとは思えない程、危機管理を含め抜け目のない男だった。

「白状します。今、他国で元第4皇子は平民のポールとして生活しております⋯⋯」
彼が言い当てたので、私は仕方がなく白状した。

「手紙のやり取りをしていますよね。ポールが暮らしているのはどこでしょう。エスパルではないですね。あそこは単一民族国家だから、ポールがいたらバレます。橋が崩落した後、なぜだか橋の下で大火事があったのです。乾燥している季節ですから、山火事など珍しくないと思われるでしょうね。だから、元第4皇子の連れた軍隊は死体もあがってなくても全滅ということになっています。ミリアが助けたかったのは第4皇子だけですよね。でも、彼を助けるために必要な何人かはついでに助けている。運良くミリアに買収してもらえたのは、誰でしょうか。橋の崩落したところの領地の令息はミリアのアカデミーの同期ですね。ミリアに告白してこっぴどく振られていましたが、駒としては採用されていた。彼は貿易業で成功をおさめていますね。相手国はどこでしたっけ⋯⋯」

信じられないことに、彼には全てバレているようだった。