「あのミリアが誘ってくるような表情をずっとしていたから期待に応えたいと思ったのは確かですが、私がしたかったからしたのですよ。他の女性には絶対にしません」

私がずっと物欲しそうな顔をしていたことを指摘されたが抗議のしようがない。
その顔は、彼の碧色の瞳に映っていたので拝見済みだ。

「そうですか、口づけもお上手だったので、てっきり女など簡単に落とせると見下している百戦錬磨の方だと警戒し、軽蔑もしてしまいました。でも、昨晩、レナード様がそんな方ではないと確信しました。私に手を出してこなかったこともそうですが、その、それ以上に⋯⋯」

私は言いかけてやめた。
彼は自分の王子スキルには自信を持っていそうなのだ。
私も自分が自信を持っているピアノに対して悪い評価を言われたら傷つく。

「ミリア、今何を言いかけてやめたのですか。私はそんな簡単に傷つく人間ではないので、言ってください。4年も思い続けたあなたに通過点だと言われても、今元気に生きてます!」

彼が私を4年思い続けたと言うのはリップサービスだろう。
でも、あなたは通過点だなんて人に対してとんでもない失礼なことを言ったものだ。

「王子の必須スキルお姫様抱っこが、ご褒美ではなく罰になってしまってました。昨日、レナード様にされたお姫様抱っこですが、気を抜くと落ちそうでしがみついて耐えるのが精一杯でした。もしかしたら、私の筋力や体幹に問題があり、巷のお姫様でしたら恐怖を感じず抱っこされるかもしれません。私に問題があるのかレナード様に問題があるのかわかりかねますが、とにかく怖かったです」

私はシーツをかぶっているので、彼の表情が見えないが返事がない。