「私のことは愛していなけれど、ミリアは条件や環境がよいから私と結婚してここにいると言いたいのですよね。ミリアから見て私は中身のない外見だけの男で、愛する価値などないということですね」

彼が明らかに傷ついているのが分かり、私は自分の言動をはじめて振り返った。
彼を突き放すことを考えていた私は、彼を3日間で飽きる空っぽな男扱いするようなことをたくさん言った。
自分がもし、同じことを言われたら私はショックで立ち直れないだろう。

「みんながレナード様を好きになるのは、あなたが王子のように美しいルックスをもっているからではありませんよ。今から100個以上のあなたの素敵な中身について語るつもりですが、聞く準備はありますか?」

私が言うとパッと彼の表情が明るくなった。
初めて彼のことを美しいと言うより、可愛いと思った。

「聞きたいです。聞かせてください、ミリア」
彼がベットに寝そべってきたので、私は慌ててしまった。

「あの、長くなるので寝転がっていると、そのまま眠ってしまうかもしれません。私ではレナード様をお部屋まで運ぶ自信がありません」
ここは、私に割り当てられた部屋でこのまま眠られてしまうと困ってしまう。
誰か力のある使用人を呼べば良いが、思い浮かぶのは細身の使用人ばかりでレナード様を持ち上げられるとは思えない。

「ミリア、実は最近、怖い夢ばかり見るのです。今日だけで良いので、ミリアの話を聞きながらここで眠ってもよいですか?」
私は、結婚前に、婚約者とはいえ男性と同じ部屋で寝たという評判がたつのを恐れた。
しかし、彼が悪夢をみるというのは私のせいではないだろうか。

順風満帆で、周りから褒められてきたはずの彼が、突然、狂気の家で育った女を娶るように言われたのだ。