侯爵邸に来て未来の女主人としてチェックしたが、国を築けそうなくらいの財産を持っている。
帝国から貰う給与以外に、多くの事業で成功をおさめていることが大きいのだろう。
実際、レナード様も学生時代から多方面の事業で成功してきた。
そこは、さすが経済書をベストセラーにするエミリアーナ様の息子だ。
私の拙い事業計画にもあっさり大金を投資してくれるのだから、本当に余裕があるのだ。
カルマン公爵家は皇族と関係を結び、皇家から権力だけでなく財産を掠め取ることばかりに集中している。
全く違う財産の増やし方だが、アーデン侯爵家の財産の増やし方の方が健やかで美しい。
でも、お金をいくら積まれても譲らない人たちも必ずいるはずだ。
私が雇われる側だとしたら、私はお金では自分の技術を売ろうと思わないからだ。
「名誉を重んじる人は給与が下がっても、皇室からお声がかかればそちらに行くと思います。彼のような丁寧な仕事をする人は、それに気がついてくれる人がいるところで働きたいと思うのではないでしょうか? 彼の細やかな仕事に気づいていることを伝えておけば引き抜きの話がきても、突然やめるのではなく相談をしてくれる気がします」
私の話をじっと彼が聞いてくれているので、この機会に本心を話せば戸惑われると分かりつつも大切な話をすることにした。
「レナード様、私が1週間前は婚約を破棄すると言っていたのに、今はここにいたいと言っていることに戸惑ってますよね。でも、私は心から今はレナード様と結婚したいと思っています」
彼には父の支配を解いてもらったという恩もある。
だから、私は妻として自分ができる最善の仕事をして恩返ししようと思う。



