まともに後継者教育も受けていなければ、公爵家の裏の仕事もしらないスコット皇子にこの家を任せられるわけもない。
私がどれだけのものを犠牲にして公爵になるために尽くしてきたことか。

アカデミーで一番の成績をとらなければならない重圧に苦しんだ日。

父の裏の姿を知ってショックを受けながらも、女公爵になるために受け入れた日。
苦労の日々を思い出したら人前だというのに頬に熱いものがつたうのが分かった。

「ミリアは仕事人間だから女しか産めないの。仕事とかでストレスを溜めると男の子の遺伝子を殺してしまうらしいのよ」

姉が言う言葉が遠くに聞こえる。
私は女しか産めないらしい、子など女など男でもどちらでも良い。
もし私が子を産むとしたら、私の子にはこんな理不尽で苦しむ思いはさせたくない。

「お願いします。どうか、私に仕事をさせてください。」

仕事は確かにストレスを感じることが多かった。
しかし、私にとっては生き甲斐でもあったのだ。

ずっと努力してきたのに、今更、子を産み夫を支える貴族の夫人になりたくない。
私は跪いて父に縋った。