「アカデミー入学時のことを言っていますか?よく、ご存知なんですね。私に愛を乞うてきた男の中に、あなたはいなかったと記憶しております。男ばかりの中に女が放り込まれれば、どんな女でも同じ状況になると思いますよ。それは人間だけではなく、いかなる動物の世界でもそうです」
彼は私のことを4年前から好きだと言っている。
あの頃、彼から告白されていたらどうだっただろう。
でも、そんなことはなかったし、困っていた私を助けてくれたのも彼ではなくサイラスだ。
「それに、ミリアと結婚することにより起こり得るリスクも十分理解しています。同時に、私ならミリアが危機的状況に陥っても守れると自負しております」
今度は私の髪に触れようと彼が手を伸ばしてきたので引っ叩いた。
「私が危機的状況に陥る可能性を示唆するということは、カルマン公爵家の闇の深さをご存知なんですね。では、アーデン侯爵家の弱みを握らせてもらえますか?私に潰される覚悟がおありで、私を迎え入れようとしているのですよね。」
彼ほど政界の中枢で力を持っていたら、カルマン公爵家の不正など私が示唆する前から分かっているということなのだろう。
その事実を握りながら、公爵家を潰しにくるのではなく私を嫁に娶ろうとする彼の意図はなんだ。
「私は貴族派の首長カルマン公爵家には健在でいて頂きたいと思っております。帝国運営において、一方の派閥が権力を握るのはよくありません。現在は貴族派の力が強いので、アーデン侯爵家をはじめとする皇帝派の力を強める必要があるでしょう。アーデン侯爵家の弱みといえば、カルマン公爵家ほどではなくても闇を抱えているというところでしょうか」
彼があっさりと弱みを言ってきたが、これは本当だろうか。



