「うちは徹底的な能力主義なんだ。レナードが一番優秀なので三男だろうが跡取りだ。双子の兄は領地経営や事業をして遊んでいるよ」

元アーデン侯爵が笑いながら言ってくる。
信じられない、兄という目上の存在の前で弟の優秀さを隠すことなく話すなんてありえないことだ。

心配してレナード様の2人の兄達を覗き見ると、2人も当たり前のように顔を合わせて笑っている。

「初めてアーデン侯爵領を訪れましたが、首都よりずっと裕福で人々が生き生きとしています。アーデン侯爵領の税率は他の領地よりも低いですが、それにより商人を呼び寄せる以外にも富を集める工夫をなさってますよね。そのことについてご教授頂ければありがたく存じます」

私は領地経営についてどうしても気になったので、元アーデン侯爵に尋ねた。

税率を下げれば、優秀な商人が目をつけ商業が発達するだろう。
でも、それだけではないくらいこの領地は栄えていて人々が生き生きとしている。

「その秘密はレナードが知っていますよ。現、アーデン侯爵はレナードですから」

私は隣にいるレナードを見ると、彼はいつものように余裕の笑みを浮かべている。
先ほどまで息もつかせぬほどの口づけをしてきた彼を思い出し胸が詰まった。

応接室に行くと信じられないことに、私の憧れの人がいた。
「エミリアーナ・クラリス様ですよね。あなた様の経済書は全て熟読させて頂いております。比べるのも失礼なくらいアカデミーの教材よりも現状を認識されていて、常に学びを頂いております」

私は思わず目の前の憧れの女性の出現に興奮気味にまくし立ててしまった。

私のアカデミーの入学はエミリアーナ・クラリスという才女以来の女性入学だったのだ。
当然彼女は入学から卒業まで小テストまで首位の座を譲らなかったという伝説の才女だ。


「母上、ミリアは母上に憧れているようです。久しぶりに経済の話がたくさんできそうですよ。」
隣にいたレナードの言葉に驚いてしまった。