「私、領地には行かないって言いましたよね。刺繍されたハンカチを貴族令嬢が送る意味って分かってますか?令嬢達に好意を表されて、レナード様はそれを受け取ってるんですよ。私というものがありながら、信じられない浮気者です。やはり、あなたとは結婚できません」
私は怒りを抑えながら、立ち上がった。
「待ってください。ハンカチは受け取らないと、令嬢たちに恥をかかせてしまうと思い受け取っていました。ちなみに、婚約はもう成立しています。ミリアはどうあがいても私の妻になるしかありません」
立ち上がった私を引き止めようとしたレナード様の力が思いの外強くて、私は彼に押し倒されたような形になってしまった。
幸い下が父が特注でつくらせた上質なソファーでふかふかだったから助かった。
「なんて、破廉恥なんでしょう。私の上からどいてください」
私は見上げたところに、レナードの顔があって慌ててしまった。
「申し訳ございません、ミリア。逃げられると思って慌てて捕獲しようとしてしまいました」
私を抱き起こしながら言う言葉に、少し吹き出してしまった。



