「今まで散々頑張ってきたのに、結局、私は高位貴族のご夫人になるのね。サイラス、あなたと一緒に帝国を出て自分の力を試す選択肢もあると思っていたのよ。なんだったのかしら、私たちが高めあってきた日々って。ずっと、紅茶を入れる練習でもしておけば良かったわ」

声が震えてくる、泣いてもサイラスは私を抱きしめて慰めてはくれなそうだ。
私の言葉に何かが込み上げていたのか、彼は何も言わずに見つめてくる。

もういい、彼の元から去ろう。
彼は私のことを好きだからこそ私の幸せを願って別れるのが、最善だとでも思っているのだろう。
身勝手な男だ、もういらない。

「これだけは忘れないで。勝手に私の幸せを決めないで。何様のつもりよ。さようなら、サイラス・バーグ」
私は今にも泣きそうになるのをじっと耐えて彼の元から去った。