「私って誰からか奇襲攻撃にでもあう予定でもあるのかしら? 私は誰かに守ってもらいたいなんて思ったことはないわ。私が支え合いたいと思う相手はあなたなのよ」
昨日のレナード様と言い、なぜ二言めには守ると言って来るのだろうか。
サイラスが私を守ると言っている理由は実のところわかっている。
私は父から多くの不正や横領をしていること告げられ、カルマン公爵となる時はその負の遺産も継がなければならないことを知った。
カルマン公爵家が皇家と同等と言えるまで力を持ち、他の公爵家を潰したことには裏があったのだ。
「正義の味方になりたいんじゃない、公爵になりたい。でも、もし不正の事実が露見したら、どうなるのか怖い」
私は当時心を通わせ、すでに本物の彼氏に昇格していたサイラスに涙ながらに打ち明けた。
「その時は国外に一緒に逃げよう。俺はミリアのためなら全てを捨てられるよ」
そう言って、私の額に口づけをして抱きしめてくれたのを覚えている。
「ミリア、覚えている? 俺がカモフラージュ彼氏に立候補した時のこと。君は他の男が俺に勝てると思ったら寄って来ると言って最初は断ったよね。寄って来ちゃったよ、誰も勝てないよアーデン侯爵なんて⋯⋯」
彼が自重気味に笑うのに、私は怒りを感じた。
私が彼に惹かれたのは私にはない自信に溢れた瞳だった。



