確かに、ラキアス皇子は見た目以外他の皇子より優れたところが見つからない。
「皇帝になるのに年齢に規則はないが、成人してから皇位につくのが暗黙の了解だ。」
父が姉に言った言葉に、思わず深く頷いた。
ラキアス皇子殿下も自分が皇帝になる前から姉との隠居生活を考えているのだろうか。
そんな志のない人間が皇帝になったら、ますます我が公爵家の力が強まる。
私はここまできて、姉の意図に気づき始めた。
彼女はラキアス皇子を皇帝にしても、公爵家の力は強まるということを暗に父にアピールしている。
愚かなように見せて、彼女は賢い。
だから、私はいつも彼女に人生を振り回されてきたのだ。
「軍に関することは成人してからしか裁可できないし、周りが未成年の皇帝を認めない」
父が姉の計画がうまくいかないことを強調している。
相変わらず、愛おしそうに彼女を見つめるラキアス皇子に吐き気がする。
紫色の瞳と美しい見た目だけを持っただけで、自分は誰より価値があると思ってそうなところが姉そっくりだ。
「赤ちゃんの頃から、子供は親の仕事をするものと洗脳するのよ。12歳には皇帝になれるように幼い頃から彼に皇帝の仕事をやらせるの」
姉が得意げに自分の計画を話す。
私は姉の言葉に身震いがした。
彼女はまだ母になった経験がないとはいえ、子供への愛情もないのだろうか。
自分の子供を洗脳するように父親を嗾すなんて、ここまで狂った女だったとは思わなかった。
「そんな、成人にもなっていない皇帝など認められるはずがない」
父が声を荒げた。
帝国法では皇帝になる年齢は明記されていない。
しかし、少年皇帝など誕生したことはない。
12歳だなんて子供すぎる。
爵位を継ぐための後継者アカデミーの入学年齢でさえ12歳だ。
そんな子供が皇帝になったところで貴族たちが従うはずがない。
「その為のお父様でしょ。誰も文句の言えないような皇帝に育ててしまえば良いのよ」
姉がドレスでもおねだりするような感じで父に甘えた声で言う。



