「愛しているだなんて、初めて言われた」
私は愛という言葉はなかなか口にできないと思っていた。
サイラスからも好きだとは言われても、愛しているなどと言われたことがない。
胸元のルビーのネックレスを握りしめる。
こんな精巧なバラの細工をして、私のために用意してくれたのだろうか。
そのことを喜んではいけないと首を振ると、髪につけられたバラから花の香りがする。
「どうして、このバラには棘がないの? どこから出してきたの? それとも瞬時に棘をとったの? 本当に私を愛してるの?」
私にはサイラスという恋人がいるはずなのに、レナード様が自分を本当に愛しているかが気になって仕方がない。
そんなことを気にするふしだらな自分が嫌いだ。
「サイラスと逃げなきゃ。私が私であるために!」
私はバラのネックレスを首から外して握りしめながら呟いた。



