彼の全てに惑わされてしまいそうになるが、私には恋人がいる。
彼の助けなどいらないくらい強くあれると思う。

「レナード様が私を守るですって? 私が傷ついている?傷 のない人なんていませんもの。そう言って今までも何人の女を口説いてきたのでしょう。あなたが、そう言えば女は大抵自分を理解してくれていると勘違いするでしょうね。あいにく私はそんな愚かな女とはちがいます。確かに、地位も名誉も美しさもあなたはサイラスより優っています。でも、私にあなたは必要ありません。私には支えてくれる愛する人がいます。さようなら、レナード様。もう、お話しすることはありませんわ」

私は自分に言い聞かせるように彼にきっぱりと言い放った。

「私にはミリアが必要です」
まともに話すのは初めてなのに、彼が私にすがるような目つきで言ってくる。

100人いたら99人は彼のこの目に屈するだろう。
私は残りの1人になってみせる。

「私には必要ありません。今まで16年生きてきて、あなたを必要と思ったことはありません。どうぞ、お帰りください。あなたを必要とする女性がたくさんいるでしょう」

自分で言っていて、なぜこんなにも苦しいのだろう。
私がありえない程、レナード様に惹かれているのは自覚していた。

心臓の音がうるさくて会話に集中できないし、目線を合わせると取り込まれそうで目線を合わせられない。
しかし、レナード様が私に惹かれているのは演技ではないだろうか。
私は女らしい性格をしていないし、彼のような特別な男を引きつける魅力は要していない。

彼のような完璧で魅力に溢れた男が今まで寄ってくる女を相手にしなかったのは私のためだと言っている。
冗談にもほどがある、男とはそんな理性的動物ではない。

だから、私にはサイラスが必要だったのだ。
男ばかりの世界に放り込まれても、守ってくれた彼が。