「愛しているなんて言葉を簡単にお使いになるんですね。レナード様は約束を破ったら口づけするんですか? 流石ですね、そんなふしだらなこと私は思いつきませんでした。多くの女性は喜んで約束を破るでしょうね。私はそんなことをする男を信頼などできません。てっきり、約束を破ったから、私の秘密を教えてくれとか頼んでくるのかと思いましたよ」
私はレナード様が簡単に私を落とせそうと思った気がしてショックを受けていた。
口づけではなく、秘密を聞かれたり、好きな食べ物を聞いて私を知ろうとして欲しかった。
まともに話すのなんて今日が初めてなのに、私の中身を知ろうとしない彼に失望していた。
「ミリアにしか口づけなどしません。ミリアは秘密を聞けば教えてくれるのですか?」
彼は私に目線を合わせようとしてくるが、私は惑わされたくないので目線をはずした。
「私の秘密は、私には好きな人がいて、レナード様とは結婚はできないということです」
私は彼にきっぱりと言い放った。
この結婚話はお断りだ、彼も私を利用しようとしているに違いない。
父にも姉にも利用されて、もう振り回される駒のような人生にうんざりしているのだ。
「ミリア、あなたはたくさんのことで傷ついています。私がその傷を全て癒せるかは分かりません。努力します、だから私を信じて頼ってあなたを傷つける全てのものから守りますから」
美しい瞳、惑わすような香り、甘い声。



