彼と結婚した瞬間、この日を何度も繰り返したいと思うほど幸せだったのに。
私の決意の弱さのせいで、台無しになってしまった。
「ミリア、実はあなたに秘密にしていたことがあります。あなたは魅了の力を持っています。だから、陛下を侮辱するようなことを言ったとしても彼はそれを覚えているかさえ微妙です。たとえ覚えていても陛下はそれを咎めるような方ではありません。あの時の陛下は、とにかくあなたを愛おしく思っていて朦朧としていた可能性が高いです」
何のことを言っているのかわからないが、レナードに迷惑がかからないのなら何でも良い。
「魅了の力とはカルマン公爵家の紫色の瞳の女が持つ力です。帝国の皇帝は何どもそれで操り人形のようにされてきました。男を自分の思い通りに操る力です。ミリアは赤い瞳をしているにも関わらずその力を持っています。ちなみにアーデン侯爵家の人間は操れませんよ。その理由については明日お話ししますね」
レナードが愛おしそうに私の髪を撫でながら話してくる。
確かにカルマン公爵家では紫色の瞳で生まれると皇族と結婚しなければならず、皇族専属の女と使用人が囁いてたのを聞いた。
確かに皇帝陛下を操れれば、帝国を意のままにできる。
姉は美しいからラキアス皇帝陛下の心を得たのかと思っていたが、そんな能力があったということだ。
そして、その能力は私にもあるとレナードが言っている。



