この子は皇帝陛下の子ではないわ。
銀髪でも紫色の瞳でもないし、お顔立ちも似ていないじゃない。

「余に子供ができたのか」
ラキアス皇帝陛下の声が耳に入ってくる。

一度くらい彼の声を聞いたことがあっただろうか。
彼は間違ったことを言っている、陛下を排除しないとお姉様のために。

「ラキアス皇帝陛下、2人きりでお話ししたいことがあるのです」
気がつくと私は皇帝陛下と2人きりで、どこかの部屋にいた。

「人払いをして頂けますか?」
私がいうと陛下が人払いをする。

「なぜ、ご自分のお子だとお認めになったのですか? 似ていないのだから、認めなければよかったのですよ。皇后陛下のことを第一に考えてください」
ラキアス皇帝陛下はボーッとしたような目で私を見ている。

「あら、私のお話が理解できないのかしら。お認めになってしまったのなら、間違いをたださなければ、あの子供と踊り子の女性を殺してしまいなさい。勝手に陛下の子だと偽ったのだから当然です。皇后陛下のお心の安寧を1番にお考えください。そもそも、皇后陛下があなたをお選びにならなければ、あなたは皇帝にもなっていないのですよ。ご自分の立場わかっていらっしゃるのかしら」

皇帝陛下が私の頰を撫でて来た。

「殺せない⋯⋯」
彼が呟いた言葉に、怒りを感じた。
(それでは、お姉様が苦しむわ)

「皇后陛下の産んだ子が皇太子になるのだから、別に他の皇子を迎えても関係ないと思っておいでですか?皇后陛下のこと全く理解していらっしゃらないのね。先程の赤子は皇太子にならないのだから、皇子として戦地に赴き死ぬ運命ではありませんか? なぜ、今、皇后陛下のことを優先して赤子を殺さないのです。あなたもご兄弟を殺しているではないですか? あなたが皇太子になった時点で、あなたのご兄弟の皇子たちは戦死しに出兵しましたよ」

私は今、言っていることがおかしい。