「エメラルドが出たのですか、父上やりましたね!」

ミリアからいつものカフェに来るように伝令があった直前の知らせに父上と俺は沸き立っていた。

彼女と俺の待ち合わせはいつも彼女が一方的に日時と場所を決め伝えて来るものだった。
俺はどんな予定があっても、彼女に合わせてきた。
彼女はもうその癖が染み付いているみたいだ。

彼女が予言師がエメラルドが出るかもしれない鉱山があると言ってきたと俺に伝えてきた時には驚いた。

エメラルドが出たと領主である父上に連絡があったのは、さっきのことだったからだ。

ミリアから会いたいと知らせがあったのは1週間も前のこと。
前からエメラルドは出ていて、わざと伝令は遅らされていたのではないだろうか。

そして、ここで俺はミリアの新しい変化に気がついた。
俺を駒ではなく人間としてみていることだ。

おそらく駒としてみなければいけないと言うのは、カルマン公爵の洗脳だ。
彼の恐怖による支配が解けたから彼女が俺を人としてみている。

俺の境遇をひたすらに心配している。
今回だってわざわざ会いに来なくても、俺は手紙で譲れと言われれば譲ることは今までの俺を見ればわかるはず。

エメラルドが出たことは、領主より早くカルマン公爵家に伝えられていたのだ。
だけど俺と会って話そうと思ったミリアによって「エメラルドが出るかもしれない」ではない鉱山は今「エメラルドが出た鉱山」になってしまっている。

でも、俺はエメラルドなんか出るわけないという演技をする。