圧力を掛けられて自分を振ったのだろうとまで予想しているが、誰にも圧力などかけられていない。
必死に一緒にいたい気持ちを抑えて彼女に別れを告げている。
おそらく彼女はある程度周囲の男を意のままにコントロールできる不思議な力があるが、それに気がついていない。
「嘘だったのね。私のためなら全てを捨てると言ったこと。私を振るの? それなら嘘でも私に嫌われるように振る舞いなさいよ、卑怯者!」
狂おしいほど彼女を求めていて、何もかも捨てれる程彼女が好きだ。
だから、嫌われるように振る舞うなんてとてもできない。
ミリアのためなら何でもしてあげたいのに、そんな演技できるような心理状態じゃなかった。
別れてからは日々ミリアのことを考えていた。
当然だ、俺は4年も一緒に不思議な魅了の力を隠し持った彼女といたのだ。
自分のことだけを考えて、彼女が俺を愛していると思い込んでいるうちに逃げて仕舞えばよかったと何度も後悔した。
ミリアはが花嫁修行ということで、アーデン侯爵邸で過ごしているという話を聞いてレナード・アーデンに彼女を託したのは彼女のために最善だったと気づいた。
レナード・アーデンは彼女をまず公爵の恐怖支配下から助け出そうとしているのだ。
帝国一の名門侯爵家なら花嫁修行が長くても、周りを納得させることができるだろう。
舞踏会でレナード・アーデンと踊っている彼女は本当にお伽話に出てくるお姫様のようで、見惚れてしまった。



