「愛しているなんて言う人本当にいるのね。まるでお話の世界みたい。サイラスの両親はロマンチストね」
俺は彼女の言葉にショックを隠せなかった。
俺は彼女とお付き合いするときに彼女に「愛している」と伝えた。
「首位を譲るから恋人になれ」という言葉に変換されて彼女の耳には届いたのだろうか。
レナード・アーデン以外の男を駒としてみてしまっている彼女には、俺の言葉は人が発した言葉ではなく駒の発した言葉として認識されたのかもしれない。
「第4皇子殿下にダンスに誘われて、踊ったの。なんだか、お姫様のような気分になれたわ。私をダンスに誘ってくれるなんてお優しい方よね」
舞踏会では、いつも彼女は政界の重鎮に囲まれていた。
だから子爵令息に過ぎない俺では近づけなかった。
でも、皇族である第4皇子殿下なら彼女をダンスに誘える。
彼女がレナード・アーデンと踊りたくて、いつも彼が他の令嬢と踊っているのを見つめているのは知っていた。
きっと自分は彼と踊れなくて寂しくて虚しい気持ちになっていたのだろう。



