「本当に研究熱心だね。ミリア。周りはみんな詐欺師で、駒として使えがカルマン公爵の教えだっけ。もう、将来の準備をしているの?」

彼女が見ているのは対立する派閥皇帝派の機密文書だ。

「そうよ。でも、やっぱりレナード・アーデンはすごいわね」

彼女はよくレナード・アーデンの名前を出した。
彼女が唯一、駒としてみていない男だ。

そして、彼女はよく仲の良い平民の親子をみると羨ましそうにしていた。
彼女は女公爵になることを目指しているように、自分に思い込ませているだけな気がしていた。

「生まれ変わったら、私平民になりたいな⋯⋯」

突然、彼女が言い出したのに驚いてしまった。
高位貴族は平民を卑しいと考えている人間ばかりだからだ。

「どうして、平民になりたいの?」
俺が思わず聞くと彼女は語り出した。

「ささやかな幸せが欲しいのよ。私の理想はね。お母様と私で小さな家で幸せに暮らすの。それで、ある日庭に出ると金髪碧眼の美青年がズタズタのめった刺しになって倒れているの」

彼女がうっとりと語るささやかな幸せに、明らかにズタズタになったレナード・アーデンが登場してきた。