今までと全く違う縋るような目で見つめられて、彼女の言うことを全て聞かなければならないという思いに駆られた。
「サイラス、私たち今日から一緒に勉強しようか」
彼女と勉強しはじめて、すぐに彼女が天才ではないことがわかった。
どちらかというと、俺が彼女を教える側だった。
それでも彼女は政界に関する知識も深く、当然後継者になるにふさわしい優秀さを持っていた。
彼女が必死に学んだ結果であることは明白だった。
「私、全てのテストでトップをとって、成績は全てAにしないといけないの。そうしなければ、父は爵位を譲らないと言っていた⋯⋯」
彼女が消え入りそうな声で言うのを必死で聞き取ろうとする。
そして、彼女は父という単語を出すときにいつも震えていた。
彼女の声を聞くだけで、彼女のために何でもしなくてはいけない気にさせられる。
しかし、全てのテストでトップを取り、成績を全てAにするのは不可能だ。
そんな人間は在学生から卒業生合わせても存在しない。
なぜならば、芸術系の音楽や美術、慈善活動、アカデミーへの貢献度、人間性など多方面にわたる評価がつくからだ。
当然、反りの合わない教師も出てくるだろうし、女性であるのに公爵になろうという嫉妬から悪い評価をつける人間もでるはずだ。
「これ、明日のテストよ。一緒にやろ、サイラス」
彼女は次の日にやるテストを持っていた。
「えっ? なぜ、こんなものを持っているの?」
俺は戸惑ってしまった。
なぜならば、これは不正だ。
「先生にこれをやるように言われたから、仕方がないわ」
彼女はゆっくり言うと解き出した。
終わって見て、2人で採点した時、彼女は1問間違ってしまった。
「大丈夫だよ。ミリア。明日はそこを間違わなければ」
俺は彼女を励まそうと言ったら、彼女はじっと俺を見つめてきて囁くように言った。
「サイラスは、1問も間違えなかったのね」
俺はなぜだか次のテストから、ミリアが首位をとれるように3問必ず解答しなかった。
万が一彼女がケアレスミスをしてトップがとれなければまずいと思った。



